2児のパパスイマーの“継続は力なり”!

マスターズ水泳歴12年。短時間で効率良い練習を日々研究。-理学療法士からの視点を踏まえて-

【論文考察】健常者における下後鋸筋の運動学的役割

どうもパパかっぱです。

 

 

今回はかなりコアな内容となっております。

 

前回、肋骨の動きをイメージしてくださいとお伝えした中で、下後鋸筋が出てきました。

 

www.papakappa-swim.com

 

偉そうにイメージできるようになどと言ってましたが、臨床10年以上やってますが、正直下後鋸筋にアプローチしたことはなかったような気がします。

 

知らないことは調べましょう。

 

 

 

 

健常者における下後鋸筋の運動学的役割

 

 

www.jstage.jst.go.jp

 

【目的】
腰痛の生涯有症率は49-70%,時点有症率は12-30%とされる(van Tulder et al.2002)。その原因は十分解明されておらず、また予防法も未確立である。 Chest grippingは上部腹筋群の過緊張により下位胸郭の展開が制限される状態(下位胸郭横径拡張不全)のことである(Lee)。これは胸椎運動を制限し,腰椎運動への負荷の増大をもたらすことで腰痛の一因となり得ると考えられている。解剖学的にChest grippingに拮抗する作用を持つと考えられる筋として下後鋸筋(SPI)が挙げられる。SPIはT11-L2,3に起始し,下位肋骨に付着する。Vilensky et al.は上後鋸筋(SPS)とSPIに関する文献のレビューにより,SPSとSPIのどちらも呼吸機能がないと示唆すると結論付けた(Vilensky et al. 2001)。しかし,これらは解剖学的な見解であり,生体内で下後鋸筋がどのような役割を有しているのかは不明である。本研究では超音波と表面筋電図(SEMG)を用い,健常者における下後鋸筋の運動学的役割を調査すること,またSEMGとワイヤ電極による筋電図を比較してSEMGの妥当性を検証することを目的とした。

【結果】
下後鋸筋は体幹回旋で筋活動の増加,筋厚の増大を示し,広背筋とほぼ同様のパターンであった。下後鋸筋の安静時,同側回旋時の筋厚はそれぞれ3.49mm(3.13-3.84mm),4.98mm(4.15-5.81mm)であった。下後鋸筋の同側回旋時の%MVCは75.1%(58.3-91.9%)であった。ワイヤ電極により,下後鋸筋単独収縮を呈した動作は、側臥位での体幹同側回旋,四つ這い位(脊椎伸展位)での上肢屈曲,ATM2伸展抵抗運動であった。SEMGとワイヤ電極は最初の2動作で一致した活動パターンを示した。


【考察】
本研究では四つ這い位で脊柱過伸展位での上肢屈曲および側臥位での体幹回旋において,下後鋸筋の独立した活動が得られた。前者は,上肢屈曲により広背筋の活動を抑制し、脊柱過伸展位を保つことにより腹斜筋の活動を抑制したことから、下位胸郭の回旋の役割を持つ下後鋸筋の独立した活動が誘発されたためと考察される。後者は,上位胸郭に抵抗を加えたことにより、広背筋と腹斜筋の活動が抑制されたと解釈された。以上の結果より、下後鋸筋は同側下位肋骨を後方に引く作用を有し、片側性の活動は下位胸椎の回旋、両側性の活動は下位胸郭の横径拡張および胸椎伸展に貢献すると推測される。本研究では超音波画像の観察下で,ワイヤ電極を筋腹内に埋設した。導出された筋電図は,超音波画像における筋厚増大と一致した。また,その活動はSEMGにおいても検出することが可能であることが示された。一方,本研究の限界として,ワイヤ電極を用いた測定におけるサンプルサイズ不足が挙げられる。以上より,今後下後鋸筋に関する筋電図学的研究において表面電極を用いることが可能であると結論付けられる。また、下後鋸筋の両側性の活動は下位胸郭の横径拡張の主働筋になりうることが示唆され、これが下位胸郭の横径拡張制限であるchest grippingに対する拮抗的な作用を発揮することが期待される。


【理学療法学研究としての意義】
下後鋸筋の片側性の活動は下位胸郭を後方に引く作用を有し,両側性の活動は下位胸郭の展開の主働筋となることが示唆された。今後,後屈時に増悪する腰痛への応用が期待される。

 

 

 

 

私なりのポイントは

 

●Chest grippingは上部腹筋群の過緊張により下位胸郭の展開が制限される状態(下位胸郭横径拡張不全)

 →胸椎運動を制限し、腰椎運動への負荷増大をもたらすことで腰痛の一因となり得る

 ⇒解剖学的にChest grippingに拮抗する作用を持つと考えられる筋として下後鋸筋(SPI)が挙がる

 

●下後鋸筋は体幹回旋で筋活動の増加、筋厚の増大を示し、広背筋とほぼ同様のパターン

 

●下後鋸筋の両側性の活動は下位胸郭の横径拡張の主働筋になりうることが示唆

 →下位胸郭の横径拡張制限であるchest grippingに対する拮抗的な作用を発揮することが期待される


●下後鋸筋

 →片側性の活動は下位胸郭を後方に引く作用

 →両側性の活動は下位胸郭の展開の主働筋となることが示唆

 ⇒後屈時に増悪する腰痛への応用が期待

 

 

 

 

下位胸郭の展開

 

難しい内容ですね。

 

今まであまり意識したことなかった下後鋸筋。

 

結構大事な筋なんじゃないかな、と思いました。

 

特にスイマーにとって。

 

下位胸郭の横径拡張不全に拮抗的な作用を発揮する筋肉です。

 

私は上部肋骨が拳上・後方回旋することはストリームラインにとって良くない姿勢につながると考えています。

 

そのために、横隔膜を下げる必要があります。

 

横隔膜が下がるスペースをつくるためには、下位胸郭の広がりが必要になりますね。

 

その横の広がりをつくってくれるのが下後鋸筋なんですね。

 

とても大事な役割しています。

 

この筋肉が硬くならないようにケアが必要になります。

 

腰痛があって何をしても良くならないという人は、もしかして下後鋸筋が原因かもしれません。

 

今回は、かなりマニアックな話になってしまいましたが、頭の片隅に入れておく価値はあると思います。

 

 

 

まとめ

 

下後鋸筋の役割を理解して、きれいなストリームラインを手に入れよう。

 

では。