どうもパパかっぱです。
前回はに引き続き、水泳に関する論文シリーズです。
『競泳選手における体幹深部筋トレーニングが蹴伸び動作に及ぼす影響』からの学び - 2児のパパスイマーの“継続は力なり”!
今回は『呼吸様式が重心位置と浮心位置に与える影響 水泳における水平姿勢維持への示唆』という論文です。
めちゃくちゃ勉強になったので、ぜひ読んでください。
呼吸様式が重心位置と浮心位置に与える影響
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpehss/57/2/57_12038/_pdf/-char/ja
呼吸様式が重心位置と浮心位置に与える影響 水泳における水平姿勢維持への示唆
【諸言】
高い泳速度で泳効率のよいクロール泳を行うためには,キック動作による流体力のモーメントに依存しないで水平姿勢を維持することが重要である.
Yanai(2001)は,クロール泳のほぼ全ての局面において,浮力が生み出すモーメントが足を浮き上がらせる方向に作用する,すなわち,浮力のモーメントはストロークによる流体力が生み出す足沈み方向のモーメントを打ち消すように作用することを示した.このことから,足が浮き上がる方向に作用する浮力のモーメントを上昇させることは,水平姿勢を維持するために必要なキック動作を減少させるため,パフォーマンスを向上させる一つの手段となり得ると考えた(Yanai andWilson, 2008).
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これらの先行研究は浮力のモーメントが泳効率に影響を及ぼすことを示すと同時に,重心に対する浮心の相対位置がより尾側に位置する,すなわち浮心が重心よりも頭側に位置する際には浮心と重心の水平距離(以下「浮心-重心距離」と略す)を短くし,浮心が重心よりも尾側に位置する際には浮心-重心距離を長くすることで,クロール泳の泳効率が向上することを示唆するものである.
浮心と重心の位置関係は身体の体積分布と質量分布によって決定される.そのため,体幹部の膨張,収縮によって生じる呼吸は浮心と重心の位置関係を変化させる.先行研究によると,吸気を行うことにより浮心は重心に対してより頭側に移動することが明らかとなっている(Gagnon andMontpetit, 1981; McLean and Hinrichs, 2000).
これは吸気時に取り込まれる空気によって胸郭上部が膨張し,浮心が頭側に移動するためであると考えられる.クロール泳においては,息継ぎを行うたびに吸気が行われるが,それは同時に浮力のモーメントに泳効率を低下させる変化をもたらすこととなる.しかしながら,人の呼吸は胸郭上部の膨張だけで生じるのではなく,胸郭の下部や腹
部の膨張によっても生じる(ニューマン,2005).胸郭の膨張を伴う呼吸(以下「胸式呼吸」と略す)と比較して,胸郭下部と腹部のみを膨張させる呼吸(以下「腹式呼吸」略す)では,浮心の頭側への移動距離が減少し,重心に対する浮心の相対位置がより尾側に位置した状態で呼吸を行うことができると考えられる.
ストロークやキック動作による外力と比較して(Schleihauf, 1979中島,2005),体重と同等に加わる浮力は極めて大きな力であるといえる.そのため,重心に対する浮心の相対位置の変化は,それが微小なものであっても,外力のモーメントの釣り合いに大きな影響を及ぼす.このことから体幹の部位を選択的に膨張させる呼吸は,浮心と重心の位置関係に変化を及ぼすことで,泳効率に影響を及ぼす技術となる可能性を有すると考えられる.~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【考察】
分析の結果,呼吸様式,吸気量に関わらず,浮心は常に重心に対して頭側に位置していたこと,および浮心-重心距離は腹式呼吸が胸式呼吸と比較して短くなることが明らかとなった.これらの結果は本研究の仮説を支持するものであった.
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本研究の結果より,重心位置は吸気と共に移動し,浮心-重心距離の変化に大きな影響を及ぼすことが示された.
特に,腹式呼吸においては,吸気の開始から終了にかけて0.4%BH 尾側に移動していた(Fig. 8).これは浮心-重心距離の増大の68%が重心の移動によって生じていたことを意味する.~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
呼吸に伴う重心位置の変化が呼吸様式間で差がみられるのは,呼吸を行う際の臓器の移動が呼吸様式間で異なったためであると考えられる.この MR 画像では,吸気と共に腹腔,及び腹腔内の臓器が尾側に移動すること,そしてその移動は呼吸様式間で異なることが伺える.腹部のみを膨張させる腹式呼吸では,胸郭のみを膨張させる胸式呼吸と比較して腹腔及び腹腔内の臓器の尾側への移動が大きく,重心の位置が尾側に移動したものと考察される.
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呼吸様式を変化させることによる浮心と重心の位置関係の変化は,クロール泳中に作用する浮力のモーメントを変化させるものである.100%ICの吸気量において,浮心-重心距離は腹式呼吸によって0.09 cm 短くなる,すなわち浮心の重心に対する相対位置は0.09 cm 尾側に移動するという結果であった.また,この吸気量における被験者の浮力は平均で691.5 N であった.これらより,同一の泳者が呼吸様式のみを変化させてクロール泳を行った場合,ほとんどの局面で浮心は重心に対して頭側に位置するため(Yanai 2001),腹式呼吸では胸式呼吸と比較して,浮力のモーメントが足が浮き上がる方向に約0.6 Nm 上昇することが期待される.
この腹式呼吸を用いることによる浮力のモーメントの変化は,水平姿勢を維持するために必要なキック動作による流体力を減少させるものであり,泳効率の向上をもたらすものであると考えられる.
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すなわち,呼吸様式を変化させることによって生じる0.6 Nm の浮力のモーメントの差は,水泳経験者が0.6―0.8 m/s で泳いだときの泳効率を 5 %改善することを意味する.このことはクロール泳中,どのような呼吸様式を用いるかが,泳パフォーマンスに影響を及ぼすことを示唆するものである.
【結 論】本研究の目的は腹式呼吸と胸式呼吸を比較した場合,重心に対する浮心の相対位置が腹式呼吸を行うことで,より尾側に位置するという仮説を検証することであった.浮心と重心の呼吸に伴う移動は呼吸様式間で異なっており,腹式呼吸を用いることで胸式呼吸と比較して浮心の重心に対する相対位置が,より尾側に位置することが明らかとなった.
私なりのくだけた解説
方法、結果やその他の細かな部分については原著を必ず読んでください。
めちゃくちゃ面白いというか、タメになる論文ですね。
ただ、こんなの難しくて読んでられないという人のために、私なりに簡単にまとめると
●泳効率のよいクロール泳を行うためには、キック動作による流体力のモーメントに依存しないで水平姿勢を維持することが重要だよね
→浮力ってキックより大事じゃね!?
→足が浮き上がる方向に作用する浮力のモーメントを上昇させることは、水平姿勢を維持するために必要なキック動作を減少させる
→パフォーマンスを向上させる一つの手段となり得るかもね!?
→重心に対する浮心の相対位置がより尾側に位置すると良いかも!?
→「腹式呼吸」で浮心の頭側への移動距離が減少し、重心に対する浮心の相対位置がより尾側に位置した状態で呼吸を行うことができんじゃね!?
→浮力ってめちゃ大事だよね。ちょっとでも変わると泳効率に影響及ぼすよ!
→実際に、実験してみよう。
→結果、呼吸様式、吸気量に関わらず、浮心は常に重心に対して頭側に位置していたよ。ただし、浮心-重心距離は腹式呼吸が胸式呼吸と比較して短くなることが明らかとなったぜ!
→腹式呼吸では、臓器の移動が尾側に移動するから、重心の位置が尾側に移動したのかもね。
→浮心の重心に対する相対位置は0.09 cm 尾側に移動するという結果だったよ。
→腹式呼吸では胸式呼吸と比較して,浮力のモーメントが足が浮き上がる方向に約0.6 Nm 上昇することが期待されるぜ!
→0.6 Nm の浮力のモーメントの差は、水泳経験者が0.6-0.8 m/s で泳いだときの泳効率を 5 %改善することを意味するYO!!
ざっくりですが、こんな感じです。
ふざけすぎですかね(笑)
論文ってだけで抵抗がある人も多いと思うので、これくらいくだけても良いんじゃないですかね!?(怒られるかな・・・)
横隔膜を下げる呼吸法とストリームラインについて
私が頸椎症を患い、呼吸によるセルフ治療を行おうと思い、色々妄想を膨らませていた仮説がそのまんま当てはまる論文でしたね。
びっくりです。
私オリジナル仮説です↓↓
スイマーに必要な呼吸法 ~基礎編:横隔膜を下げる~ - 2児のパパスイマーの“継続は力なり”!
スイマーに必要な呼吸法② ~横隔膜と骨盤隔膜(骨盤底筋群)に着目して~ - 2児のパパスイマーの“継続は力なり”!
重心と浮心に着目して水泳のバイオメカニクスを考察 ~呼吸パターンを変えて美しいストリームラインをとろう~ - 2児のパパスイマーの“継続は力なり”!
水泳のための呼吸②:努力呼気と胸郭の関係 ~腹圧呼吸で、きれいなストリームラインがとれるように~ - 2児のパパスイマーの“継続は力なり”!
私なりの呼吸とストリームラインの仮説は、かなりいい線いっていたのではないでしょうか。
誰かほめてください(笑)
まぁ、冗談はさておき、やはり横隔膜を下げる呼吸を身につけることは、色々な面でメリットが大きそうです。
今はこれらの本を読んでいるのですが、普段の身体のコンディショニングを整えるという観点からも横隔膜を下げる呼吸は大事なようですよ。
横隔膜をさげる呼吸を身につけることで、
●浮心の重心に対する相対位置は0.09 cm 尾側に移動する
→浮力のモーメントが足が浮き上がる方向に約0.6 Nm 上昇する
⇒水泳経験者が0.6-0.8 m/s で泳いだときの泳効率を 5 %改善する
といった素晴らしい効果を得ることができます。
ちなみに、0.6-0.8 m/sで泳ぐということは、25mに直すと大体41秒くらいですかね。
25mを41秒で泳ぐ際に5%も効率が良くなる!!
・・・これってどんくらい!?!?って感じですね。
25mで41秒ってかなり遅いです。
私でいうと、クロールで約12秒です。
12秒で泳ぐ人対しては、5%より良いのか・悪いのか、は気になるところですね。
ただ、少なくとも効率は良くなるということには間違いなさそうかな、と思います。
首も良くなってきたし、陸上で横隔膜を下げる呼吸もだいぶ出来るようになってきたし、そろそろプールでの練習を再開して、実際に試してみたいと思います。
その感想は追々書いていきます。
まとめ
横隔膜を下げる呼吸法を身に着け、効率良い泳ぎを身に着けよう!
では。