どうもパパかっぱです。
先日、私が個人的に開催している月一回開催の触診勉強会でした。
今回は『菱形筋』です。
備忘録を兼ねて、菱形筋のお勉強です。
過去の触診はこちら↓↓
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菱形筋の解剖
【大菱形筋】
(起始)T1~T4(もしくは、T2~T5)の椎体の棘突起に付着。
(停止)肩甲骨内側縁下部に付着。
【大菱形筋の主な働き】
肩甲骨を下方回旋する。肩甲骨を後退する。
【大菱形筋の神経支配】
肩甲背神経
【大菱形筋に関する一口メモ】
大菱形筋は、小菱形筋の下に、同じ筋肉の様に張り付いている菱型の筋肉です。肩甲骨を後退するというのは、肩甲骨が、内方に移動するということです。つまり、背骨の方向に移動することを意味しています。肩甲骨の下方回旋は、背部から見て、肩甲骨が時計回りに回旋することを指しています。小菱形筋は、上方移動の力がありますが、大菱形筋は、さほど上方移動には貢献しないようです。筋肉の走行は斜め上方に走り、椎体の棘突起に付着しているので、僅かな上方移動の力はあります。
【小菱形筋】
(起始)C6~C7の椎体の棘突起に付着。
(停止)肩甲骨の内側縁の上部に付着。
【小菱形筋の主な働き】
肩甲骨を後退する。肩甲骨を下方回旋する。肩甲骨を挙上する。
【小菱形筋の神経支配】
肩甲背神経
【小菱形筋に関する一口メモ】
小菱形筋は、肩甲骨を内方に移動します。これを後退と呼びます。肩甲骨の内側縁が、背骨に接近する動きを指しています。また、下方回旋は、背部から肩甲骨を見て、時計回りに回転する動きを指しています。更に挙上は、肩甲骨が上方に移動することを意味しています。この一連の動きは、肩甲挙筋の働きと一緒になって、肩をすくめるような動きで緊張させることが出来ます。
菱形筋触診のポイント
●大前提として、肩甲骨をしっかりと触診できることが大事。肩甲棘のラインがTh2・3、肩甲骨下角がTh7の目安となる。
●小菱形筋の起始であるC6・C7を触察する。多くの場合はC5とC6に大きな違いがあるので6番を特定しやすい。首を曲げて一番最初に出てくる突起がC6であることが多い。
→肩甲骨内側端の肩甲棘上端・下端へ結ぶ線を想定する。
※この際、表層にある僧帽筋の横行部と間違いやすいので注意。
→まずは僧帽筋の走行方向(横方向)に触り、僧帽筋を特定してから斜めに走行する小菱形筋を探す。
※起始付近の筋腹は薄いため感じ取りにくい
※肩関節を自動伸展・内転(肩甲骨を下方回旋)させると触察しやすい
●C6・C7の場所を特定できたら、棘突起を一つずつ下がっていき、大菱形筋の起始であるTh4を特定する。
→肩甲骨下角へ結ぶ線を想定する。
※尾側部は、聴診三角を目安すると分かりやすい
※起始付近の筋腹は薄いため感じ取りにくい
※肩関節を自動伸展・内転(肩甲骨を下方回旋)させると触察しやすい
●大菱形筋と小菱形筋の境目は分かりにくい。大菱形筋も一つの大きな筋腹ではなく、いくつかの筋腹に分かれているので、コロンコロンとした感触を得ることが出来る。
臨床的視点
菱形筋を考える上で、一つの特徴としては前鋸筋との筋連結です。
ちなみに、前鋸筋は外腹斜筋と機能的な筋連結構造をしています。
CiNii 論文 - 菱形筋と前鋸筋は機能的に連結しているか?
【考察】
五十嵐らは解剖実習献体を用いて,菱形筋と前鋸筋が肩甲骨内側縁で線維性結合組織で連結されていることを肉眼にて確認している。また,竹内らも解剖実習献体の大菱形筋付着部を観察し,それが前鋸筋筋膜に折りたたまれるように接着していることを確認している。
このように菱形筋と前鋸筋が解剖学的に連結していることは明白であり,菱形筋の筋活動の変化率と前鋸筋の変化率が強い相関を示した今回の結果から,機能的にも連結していることが明らかとなった。
一般的に菱形筋は肩甲骨の内転・下方回旋に,前鋸筋は外転・上方回旋に作用し,両筋は拮抗筋の関係にあるとされている。
その一方でPatersonが経験に基づき推察しているように菱形筋と前鋸筋は共同筋として肩甲骨の安定に作用していることが知られている。
今回の結果は,この推察を科学的に証明した。菱形筋と前鋸筋は,解剖学的にも機能的にもあたかもひとつの筋のように肩甲骨の安定に作用すると考える。
また重回帰分析の結果から、第6肋骨前鋸筋よりも第8肋骨前鋸筋の方がより菱形筋との関係が深い傾向が認められた。これは,第6肋骨前鋸筋よりも第8肋骨前鋸筋の方が菱形筋の走行の向きに近似しており,肩甲骨の安定に対して共同筋としてより機能しやすいためと考える。
Myersもラセン線は前鋸筋のより下部を通過するとしており,下方の前鋸筋の方が菱形筋との関係が深いことが明らかとなった。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の結果は,不安定な肩甲骨に対して前鋸筋のみにアプローチするのではなく,菱形筋と前鋸筋をひとつの筋としてアプローチする必要があることを示唆している。
ここに示されているように、菱形筋と前鋸筋は筋連結しており共同筋のように作用して、“肩甲骨に対して安定する作用がある”というところが臨床では大事ですね。
教科書的な作用では、
菱形筋:肩甲骨の内転・下方回旋
前鋸筋:外転・上方回旋
に作用すると書いてあり、文字通り受け取ると拮抗筋かと思ってしまいますが、解剖を理解すると、あらゆる要素が含まれているというのが分かりますね。
ぜひ、リアルな解剖学の本を見て、色々想像をめぐらせてみると楽しいです。
また、このサイトにも菱形筋について、分かりやすくイラストで描いてますので、興味ある方は見てみてください↓↓
まとめ
筋連結の知識をもって、菱形筋の解剖をしっかりとイメージできるようになりましょう!